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『音の城 音の海』 ミニライブを見て_e0129547_0482165.gif  今日は、UPLINKで音楽ドキュメンタリー映画『音の城 音の海』をもう一度、見てきた。上映後に、大友良英さんと、映画の出演者の一人の永井くんのミニライブがあるというので。すでに映画は見たけれど、ライブを見る前に、もう一度見ておきたかった。
  

ネタばれありますよ 映画見ていない人や6日のライブを楽しみにしている人は後日見てくださいね~
服部智行&岩井主税トーク(UPLINK)_e0129547_0462818.gifUPLINKで上映中の『音の城 音の海』のアフタートーク。監督の服部智行さんと、『KIKOE』の監督の岩井主税さんが、お互いのお仕事について話してくださった。
「音遊びの会」で撮影がかぶったという縁で関わりができたというこのお二人の、超・共通点は、仕事の量と密度の凄まじさとまったく不釣り合いな、穏やかで柔和そうな物腰だ。岩井監督の、『KIKOE』の撮影にかけた労力と時間、そして編集作業に入った後の壮絶なエピソードは、VACANTでの横浜聡子監督(『ウルトラ・ミラクル・ラブストーリー』)とのトークや、『KIKOE』メイキングにまつわるガチンコトーク(大友さんに、大谷能生さんを加えた3人によるもの)でお聞きした。服部監督も、被写体となる会のメンバーたちの予測不能な動きについていく難しさを実感するなかで、撮影のたびに毎回自腹で東京から神戸に通い(3台のカメラとクルーも一緒だとすれば、ほんと大変な出費)、合計して150時間分くらいの映像をカメラに収めていったというから、こちらもまたすごい仕事量。それなのに、お二人とも、険しさというか、威圧感というか、そういうものがゼロ。大友良英さんが、世界的に活躍している音楽家でありながら、ご本人には、そういう「すごい人」としてのオーラが見事にナッシングな、何とも言えない稀有な空気感をかもしているのと、どこか相通じる感じがする。
音楽という、視覚情報を介在させることなく伝達される表現について、映画という、視覚なくして語れない表現方法の中で語るというか伝えるというか、そういうことを『KIKOE』でやり遂げた岩井監督と、知的障害をもつ人々によるコンサートという、文字通り一発勝負の一過性の出来事を、二次元の複製芸術である映画という枠組みの中に落とし込んでいながら、岩井監督に「『音の城 音の海』を見たとき、撮影現場に居合わせた自分が記憶しているあのイベントそのものを、もう一度見たと感じた」と言わしめるようなリアリティを映像の中に再構築することに成功した服部監督。いずれも、被写体となったものに丁寧に寄り添い、「撮る」「編集する」という行為の偶発性と必然性の両方を最大限に生かしつつ、被写体あるいは設定されたテーマにおけるなにか本質的な部分を、作品中に丁寧に取り出してみせている。
今日、トークを聞きながらちょっと感動!したのはまず、お二人と、「カメラ」というツールを、きちんと信用しているんだなあ、ということ。撮影されたものを編集しなおす作業は、それこそ睡眠時間を削る大変さだと思うけれど、その大変な作業をやり遂げる前提には、自分の撮影した映像は、それをつぶさに眺めなおすことによって、自分の伝えたい情報を再構築できるだけの強度があるのだ、という信念があるのだろうなと思う。大友良英さんが、「ギターを弾くのが大好き」と言い切るのと似た、カメラに対する信頼感が感じられて、なんかすごくすがすがしい。やっぱり、映画監督にはカメラを信じてもらいたいし、音楽家には楽器を信じてもらいたいし、演劇人には上演空間を信じてもらいたいし、作家には言葉を信じてもらいたい、とわたしは思う(いやまあ、4つの例が、全部同じ俎上に乗せられるものかどうかという問いは、すごく大きいけどまあ置いとくとして…)。
そしてもうひとつ、たとえばイベントやコンサートあるいは舞台芸術といった空間芸術と、二次元の表現手段である映像との接合面のあり方を、この二人はそれぞれの方法論や哲学をその都度更新しながら探し出そうとしているのだなあということもまた、印象的だった(とここまで書いたところで大野一雄さん死去のニュースが飛び込んできた。時代の曲がり角、節目、過ぎ去った時代、新しい時代の見えなさ、そんなことを考えざるを得ない、あまりにも大きなニュースだ)。従来、舞台芸術は一瞬の幻で、消えてしまったらそれで終わりだけど、映画は繰り返し見られる、ということが当たり前のように言われてきた。でももしも、映像が、舞台芸術に丁寧に寄り添ってくれることで、幻でしかあり得ないはずの舞台芸術の一種の等価物のようなものを、映像のなかに落とし込むことができたら。それこそ、映像のなかの大野一雄が、二次元の存在でしかないながらも、その映像なりのリアリティの輝きを放つ、ということができたら。そこには、映像と舞台芸術は、決してイコールではありえない、ということをはっきりと言い切る丁寧な覚悟が必要なのだと思う。それは、今日岩井監督もおっしゃっていたけれど、二つの間に何らかの翻訳機を想定することなのだろう。その翻訳機は、はっきりと、一台しかないものなのであって、だからこそ、その仕事は究極のオリジナリティを必要とするのだろう。一度出来上がった翻訳機が、べつの二つのペアの翻訳にも流用可能ということは、たぶん、ない。いやないとは言い切れないのかもしれないけれど、少なくとも、文章の翻訳みたいに、「翻訳家」っていう人がいて、その人のところにオートマチックに仕事が行って、みたいな流れが、空間芸術を二次元に移し替える「翻訳家」にも同じように出来るとは、ちょっと、考えにくい。
岩井監督は今、空間芸術の撮影し映像化する、ということをしているのだそうだ。それが「うまくいくかはわからない」と本当に不安そうに言っておられたのが、とても印象的だった。システマティックに方法論を構築できるような、簡単なことではない、ということなのだろうと思った。飴屋法水さんがしきりに「わからない」とおっしゃる「そっけなさ」と、岩井主税監督のあの「わからない」の「誠実さ」は、似ていると思う。
服部監督はこれから先、商店街を被写体とした映像を作る予定だということだった。「音の城」の、ひとつの建物の中のあちこちで同時発生的に起こる音と関係性のオーケストラの立体感と、「音の海」の、対面式舞台によるイベントでありながらどんどん形を変えていく演奏空間の柔軟性と予測不可能性を、二次元の中に切り取るという逆説を実現した服部監督が、商店街という、肉眼によるひとつの視点では切り取れない細さと長さをもつ空間(しかもそこには、予測不可能な「生」がたくさんひしめいている)に、どんなふうに向かっていくのか、こちらも興味シンシンだ。
6月5日には、大友さんがUPLINKに来て、即興でライブがあるという。「音の海」で極めて印象的な役割を果たしたとあるパフォーマーとのセッションだ。これをきちんと目撃するために、ライブの前の回、もう一度映像を見ておかねば。時間パツパツだけど、どうにかして、これは、実現したいぞ。

追記 言葉足らずのところがあったかもしれないので、ちょっと追記を。わたしは、言葉を翻訳する仕事が、三次元を二次元に「翻訳する」仕事より簡単だ、などとちっとも考えてはいない。二つの異なるものの間に身を置いて自らが切り裂かれるような不安を感じながらも着地点を探そうとする痛みと信念において、両者はむしろ同じなのではないかと想像している。
わたくし、TV5MONDEのtelespectatriceでございますのですが、さっき、なんとなくサイトを見に行ったら、すんごい面白そうなお知らせ見つけちゃった!
これ絶対面白そうだよ!わたし、仕事なかったら行きたい~~~~けど7月は学期末で、無理だわねえ・・・。
6月15日締め切りなんて、もうけーっこうすぐだわね~
英語もフランス語も出来なくていいみたいだし、でもTv5MONDEなんてもともとフランス語のできる人しか見てないだろうし、それに応募締切すぐだし、となるときっと、これの応募資格ガンガンある人にはこんな面白い公募情報は行きわたらないのでは?という老婆心から、以下に、サイトに記載の要項を引用しちゃいます。
引用なんていいから、サイトに直接行く!という方はこちらをどうぞ~ ではBon reportage !
TV5MONDE では、2010年7月3日から13日まで行われるパリ映画祭を取材するリポーターを2名、一般から募集します。

パリ市が 主催して開催されるパリ映画祭は今年8回目を迎え、パリ祭(革命記念日7月14日)の前夜祭的なパリの初夏のイベントとして定着しつつあります。
毎年招待国が一カ国選ばれ、その国の映画が期間中上映されます。今年は日本が招待国に選ばれ、期間中100本を超える日本映画(長編、短編、ホラー、アニ メ)がパリ中のさまざまな映画館で上映されます。

TV5MONDEでは、世界で紹介される日本映画について、日本人の 視点からみたリポートを、サイトやブログ、Twitter、Ustream上で配信する予定です。その取材をするアマチュアの日本人リポーターを2名募集します。経験は問いません。

募集人員:
-取材した内容を、ブログ、Twitterに書くテキスト取材リポーター。
-簡単な動画撮影を行い、 Usteamやサイト上にアップする動画リポーター。
*日本語でリポートします(フランス語を話せる必要はありません)

日本-パリ往復航空券代、現地空港-パリ市内 の交通費、及び現地ホテル代はTV5MONDEが負担いたします。
リポーターは、パリ映画祭VIPとして招待され、全ての上映会やイベントに参加し、監督や俳優、ゲストへのインタビューも優先して行うことができます。

取材内容:
- パリ映画祭取材(オープニング記者会見、パーティー、公式上映会、イベント、授賞式、会場の様子、パリの町の様子、来場者へのインタビュー等)
- ゲスト俳優/監督のインタビュー(予定:女優-シャーロット・ランプリング、寺嶋しのぶ、菊池凛子、中山美穂、監督-中田秀夫 他)
-TV5MONDE スタジオ取材 等

応募資格
-2010年7月1日から13日までパリへ行かれる、日本国籍かつ日本在住の18歳以上の男女
-フランス出国時に有効残存期間が3ヶ月以上のパスポートを所有している事
-正確な日本語で話し、かつ文章を書く事ができる方 (フランス語、英語は必要ありません)
-上記リポート業務に必要なパソコンの操作ができること

応募方法 :
以下の項目を明記の上、下記応募先メールにてお申し込み下さい。

1)お名前
2)Eメールアドレス
3) 1600字以内でレポートをお送り下さい。以下二つのテーマのうち一つをお選び下さい。 (添付ファイルではなくメール本文にご記入ください)

テーマ1:映画について
テーマ2: TV5MONDEで放送されている映画の感想

4) TV5MONDEについての感想や印象を、400字以内で述べて下さい。
5)ブロガーの方や、ソーシャルネットワークサービス (Facebook、Twitter、Mixi等)に参加している方は、ページのURLをお送り下さい。

6)動画撮影及び編集ができる方はその旨をお書き下さい。撮影機材所有の有無も合わせてお知らせ下さい。

応募先メールへ(クリック)
応募締切
2010年 6月15日 午前0時 メール必着

僕らに未来などない。確実な未来といえるのは死だけだ。僕らが手にしているのは、今この瞬間という宝だけなのだ。 一秒ずれるだけで、それはもう僕らのものではない。 ジャン・ジオノ

"Nous n'avons pas de futur. Pour tout le monde le futur parfait c'est la mort. Notre seul bien c'est le présent, la minute même ; celle qui suit n'est déjà plus à nous" Giono
# by apresthese40 | 2010-05-30 23:46 | メモ
29日、『海の沈黙』を見ようとUPLINKの窓口でチケットを買おうとしたところ、『音の城 音の海』もUPLINKで上映中であることがわかり(というか29日が初日だったらしい)、夜の回の整理券をゲット。

「音遊びの会」(「自閉症、ダウン症、ウィリアムズ症候群など知的障害者との即興演奏について研究している学生たちによって(以上プログラムより引用)運営されている会で、「知的障害者と音楽療法家、音楽家たちが自由に演奏することで『新しい音楽』をつくる)のドキュメンタリーだ。
映画監督の舞台挨拶などもあって、ああ、今日が初日なんだな、ということを今更実感。必ず見に行こうと思ってた映画だったのに、ここのところちょっと気ぜわしくて、取りこぼしていた。危なかった。っていうかわたしってラッキー。

ネタばれ100%なしにする自信がないので、隠します
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