人気ブログランキング | 話題のタグを見る

吾妻橋ダンスクロッシングに行ってきました

金曜深夜からなんだか体調がおかしくなり、土曜日は予定を全部ぶっちぎり、昼夜が分からなくなるくらいの断続的な睡眠をとって今日はどうにか復活、吾妻橋ダンスクロッシングに行ってきました。といっても、前半は頭痛が全然収まらず、途中休憩の20分のところで受け付けの女性から頭痛薬2錠をいただき(ありがとうございます!)、後半どうにか持ちこたえて・・・というありさま。日吉のガッコの期末テストを休み明けに持ち越したせいもあって、そろそろ身体が「もう学期末でしょお、いーじゃんいーじゃんやすんでもお」モードに入っているのに違いない。いや、そうはいかんのよ、そうは。学期末は、学期始めの次くらいにしんどいのであるからして、休むとこじゃあ全然ないのよ、わかっとるかね、わたし!?

後半2本目のoff-nibrollの「ギブ・ミー・チョコレート」と、飴屋法水「たち」の「つるとんたん」に、圧倒された。





矢内原美邦さんのつくる舞台は、たぶんわたしはこれが3回目。一回目が「5人姉妹」、二回目が横浜のSTで先日見た「幸福オンthe道路」。
喪服のようなものを来た女性が4人。小道具と、バックの幻燈が、パフォーマーの声と身体とに絶妙にマッチ。
途中からふと、わたしが心の中の舌の上でずっと転がしていた言葉は、「愛はみっともない」。
そう、愛はみっともないんだ。崇高でも、劇的でも、壮大でもない。卑小で、日常的なものでしかない。でも、そういうみっともない愛にしか、なにかを動かす力はない。そんなことを、スタイリッシュな映像と、パフォーマーの、なにかが壊れかけているような動きと、奇声と、爆音に翻弄されながら、思っていた。
そして、いずれ大地に根付くのは、そういう、みっともないものだけなんだろうな。


飴屋さんの「つるとんたん」は、「4.48サイコシス」と出演者がかぶっているので、どうしてもその延長線上で観てしまう。というか、もう、わたしには、「先入観」なしに飴屋作品は見られないと思う。
出演は、村田麗薫さん、安ハンセムさん、立川貴一さん、くるみちゃん、飴屋さん。
「サイコシス」で、山川さんの倍音が霊界から聞こえる高音だとすれば、村田さんのソプラノは、人間界から聞こえるなかで一番高い音だった。そして、安ハンセム(セミさん)の声が女性パフォーマーのなかでいちばん、立川貴一さんの声が男性パフォーマーのなかでいちばん、「怒号」に近かった。セミさんの声、立川さんの声には、いずれも強い情念がこめられていて、村田さんの声は、その対極にある無機質な感じだ。鈴やトライアングルなどの柔らかくでも高い音が、発語のたびに聞こえる感じだ。
村田さんの、ゆっくりと区切るようなその高い高いクリスタルヴォイスに耳を傾けていると、不思議なことに、全員の声が、聞こえてくる。ような、気がする。と言っても、わたしは、かなり端のほうに座っていたので、セミさんの声は、それでもあんまり聞き取れなかったのだけど、やっぱり、村田さんの声が濾過してこちらに届けるセミさんの声はすごく、やわらかい。立川さんの叫び声も、怒号でありながら、こちらを疲れさせることがない。
わたしが見た回だけかもしれないけど、最後のほう、村田さんの声が、だんだん、強度を失い聞こえなくなってきていた。と、そこで、飴屋さんの震えるような声が、かぶるように聞こえてきた。「ぼたん」という名の「命」の話だった。そこで、セミさんと相似形の衣装をまとったくるみちゃんが、お父さんのところにふわりと近づいて、それで、そのまま、作品は、終わった。
セミさん、立川さん、飴屋さんは、たしか、それぞれに、人の誕生にまつわる悲しいストーリーを、語っていたように記憶している。その悲しみを伴う物語の数々が、今確かに生きている人々の声のつぶてを経由して、私たちの耳元まで届く。
生きていて、ありがとうという言葉が、ふと脳裏をよぎる。

飴屋さんの作品を見ていていつも思うのは、「命がけ」ということだ。
「ぜったいかあ」「ぜったあい」「いのちかけるかあ」「かけるう」なんて、売り言葉に買い言葉の小競り合いをした子供時代があったなあとふと思い出す。飴屋さんの「命がけ」には、息が詰まる。息がぐぐぐっと詰まって、でも、その次の瞬間に、肩から、重たい荷物がすっぽりと抜けて浮かび上がる、そんな感じだ。
・・・なんかこれ、舞台作品の感想って感じじゃないなあ・・・。
・・・わたしはいったい、どんなジャンルの、どんな作品を、観たのかなあ・・・?

そうだ。
最後に、遠藤一郎さんの、「元気いっぱいいきましょう」っていうのがあった。
わたしが見た回だけなのか分からないけど、あの超・スベリまくりのパフォーマンスが、なんか不思議と、楽しかった。だれにも、気安く「イエーイ!」と答えさせない、不思議な不思議な間の取り方。カラ元気を、最後までひとりぼっちで引き受ける、ピエロという概念がそのまま受肉したかのような、不思議な躍動感。客席からの同調を、ぎりぎりのラインで毅然と拒否する潔さ。印象的だった。

家に帰ったら、頭痛薬がしっかり効いたようで、これを書けるくらいにまで復調した。
そして・・・おお、明日は、私が言いだしっぺの読書会の第一回ミーティングなのだった。よおし。よおおおおし。

追記。
村田さんの名前を間違って表記していました。村田薫さんじゃなくて、村田麗薫さんです。今、直しました。ごめんなさい。
←menu